Critique Of Games ―ビデオゲームをめぐる問いと思索―

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A.プレイヤー圏とゲームの成立

1.安川一[1993]は、ゴフマン社会学を下敷きとしつつ、コンピュータ・ゲームにおける「プレイヤー圏」なる概念を唱えた。*1 2.これを受けて、増田泰子[2006]は、プレイヤー圏を介して適度なルール・ブレイキングが行われることによって、プレイヤーがゲームとの距離を適度に保ちうる構造が成立していることを指摘した*2

B.公共圏とゲームの成立

3.稲葉振一郎は、ハーバーマスの公共性概念を手がかりに、ゲームにおける「やりこみ」行為と、プレイヤー同士の公共圏とが相互に支え合う構造があることを指摘し、両者がゲームを「面白い」と感じさせるためのサブシステムとしての性質を持つのではないか、と推論を述べる。だが近年では、プレイヤーの「やりこみ」行為を、ゲームメーカー自体が予期し先回りしてゲーム自体に組み込んでしまう。そのことがゲームの公共圏の活発化を阻害し、「ゲームの面白さ」の成立が難しくなっているのではないか、という。 *3

C.ゲーム的公共圏

4.はてなの「予測市場」にみられるように、自らの利益を最大化させるゲームに参加するという個々のプレイヤーの振るまいを利用しつつ、それを公共的な予測機能などに活かすといった試みがはじまっている。 5.こうした試みの先にある究極的な未来を描くのが、東浩紀、桜坂洋らによる「ギートステイト」プロジェクトである。

参考

斎藤純一『公共性』岩波書店 2000 ほか。



*1 『現代のエスプリ』1993
*2 RGN第三回
*3 稲葉振一郎「インタラクティヴ読書ノート」ゲームと公共性 http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20060629#p3
最終更新: 2007-02-18 (日) 02:00:18